花王のAI活用とは、経費精算の完全自動化・グローバル約16,000人が利用する社内生成AI「Kao AI Chat」・顔画像から77項目の肌状態を推定する独自AI「Kirei肌AI」など、「社内業務効率化」「社員育成」「製品開発・顧客体験」という三層すべてを網羅した、日本の消費財メーカーを代表するAI活用戦略です。
この取り組みは、中期経営計画「K27」で掲げる「グローバル・シャープトップ」の実現に向けて、「2027年までにDXという言葉を社内からなくす」という大胆なビジョンのもと推進されており、AIを日常業務の当たり前のインフラとして根づかせることを目指しています。
この記事では、花王AI活用の背景・推進体制・社内生成AIの仕組み・製品開発AIの最新成果・経費自動化の実績・社員AI育成プログラム・他社への示唆の順に、AIやDXに関心のあるビジネスパーソンにもわかりやすく解説します。
「ビオレ」「アタック」「リーゼ」「エコナ」——花王は日本人の生活に欠かせない消費財ブランドを多数持つ一方、その裏側では研究開発から生産・販売・管理業務まで全領域でAIを積極的に活用する先進企業です。
「AIを一部の専門家が使うもの」から「全社員が当たり前に使うもの」へという変革を着実に実現しつつある花王の取り組みは、製造業・消費財メーカー・一般企業すべてにとって参考になる実践的な示唆を持っています。ぜひ最後までご覧ください。
- なぜ花王はAIに本腰を入れるのか?背景と経営戦略
- 花王のAI推進体制:デジタル戦略部門とDX銘柄選定
- 社内生成AI「Kao AI Chat」:グローバル16,000人が毎日利用
- AI人財育成プログラム「DXAP」と「Kao AI Academy」
- Microsoft Copilotとの統合活用:1,000名規模のトライアルから全社展開へ
- 経費精算AIの自動化:年間約5.5万時間・1.5億円の削減
- 製品開発AI①:肌評価AI「Kirei肌AI」の大幅進化
- 製品開発AI②:皮脂RNAモニタリング技術とAI融合
- 顧客体験AI:双方向プラットフォーム「My Kao」と肌診断サービス
- 花王AI活用から学ぶ:消費財・製造業が実践できる3つのヒント
- 花王AI活用 主要取り組み 比較まとめ表
- よくある質問
- まとめ:花王 AI活用が示す「消費財メーカーのDX最前線」
なぜ花王はAIに本腰を入れるのか?背景と経営戦略

出典:https://unsplash.com/ja
花王がAI活用を全社的に加速させている背景には、中期経営計画「K27」(2025〜2027年度)が掲げる「グローバル・シャープトップ」というビジョンがあります。
「グローバル・シャープトップ」とは、顧客の重大なニーズに対して、エッジの効いたブランドやソリューションで世界No.1の貢献をすることを意味します。このビジョンを実現するために、AIを「日常業務の当たり前のインフラ」として全社員・全事業に浸透させることが経営の最優先課題の一つとして位置づけられています(参考:花王 公式サイト、Microsoft Customer Stories)。
「2027年までにDXという言葉をなくす」という大胆な目標
花王のDX・AI戦略の中核にある考え方が、「2027年までに、DXという言葉を社内からなくす」というビジョンです。
AIやデジタルが「特別なもの」「IT部門のもの」ではなく、電話やパソコンと同じように誰もが当たり前に使う存在になる状態——それが花王が目指す究極のゴールです。この思想は、一部の先端人材だけが活用するのではなく、全社員がデータとAIを使いこなしながら変革が常態化している企業を実現するという意味を持っています(参考:AI経営総合研究所)。
2018年から積み上げたデータ活用基盤が土台に
花王のAI活用が急速に進んでいる背景には、2018年から本格化した長年のデータ活用基盤の整備があります。
2024年には「データ知創戦略センター」を設立(2025年1月に「データインテリジェンスセンター」に改称)し、データの利活用をより一層推進する体制を整えました。データが適切に整備・管理されていることが、AIを有効活用するための不可欠な前提条件となっています(参考:OPEN HUB)。
花王のAI推進体制:デジタル戦略部門とDX銘柄選定
花王のAI活用を組織的に支えているのが、2025年1月に新設された「デジタル戦略部門」です。
それまで個別に存在していた「情報システム部門」「DX戦略部門」「SCM部門の一部機能」を統合し、価値創造につながるデジタルトランスフォーメーションを一気通貫で推進するための組織として新設されました。常務執行役員を部門統括とし、「デジタル戦略企画センター」「データインテリジェンスセンター」「情報システムセンター」などの4センター体制でDXを推進しています(参考:花王 公式資料)。
また、DX推進に関する戦略確認や投資については、毎月開催される「DX推進コミッティ」において報告・決議が行われており、デジタル戦略部門担当常務執行役員が議長を務め、代表取締役社長執行役員がアドバイザーとして参加する経営直結の意思決定体制が整えられています。
「DX銘柄2026」に選定:外部からも高評価
花王のAI・DX推進は社内での成果だけでなく、外部からの評価でも実証されています。
経済産業省と東京証券取引所が選定する「DX銘柄2026」に花王は選定されており、AI活用を含むデジタル変革への取り組みが日本の上場企業の中でも特に優れた企業として認定されています(参考:花王 公式サイト)。
社内生成AI「Kao AI Chat」:グローバル16,000人が毎日利用

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花王のAI活用の中核をなす社内ツールが、グローバルで約16,000人の社員が活用する独自の生成AI「Kao AI Chat」です。
Azure OpenAI Serviceを採用し、ユーザーインターフェースはAzure Web Appsで自社開発。入力情報が社外に漏洩しないセキュアな環境を実現しており、2023年6月に「Kao AI Tools」として提供を開始(後に「Kao AI Chat」に発展)、利用ガイドラインも同時にリリースしました(参考:Microsoft Customer Stories)。
毎日2,000人以上が活用する定着率の高さ
Kao AI Chatの最も注目すべき点は、その高い定着率です。
日々の業務で毎日2,000人以上の社員が積極的に活用しており、文書作成・情報収集・データ分析・コード生成・アイデア出しなど幅広い用途で使われています。「一度使ったら終わり」ではなく、継続的に使い続けられる日常ツールとして根づいていることが、花王の生成AI戦略の成熟度を示しています(参考:AI経営総合研究所)。
全社員がMicrosoft Copilotにもアクセス可能
Kao AI Chatに加えて、花王ではMicrosoft Copilotも全社員が利用できる環境が整えられています。
社員はKao AI ChatとMicrosoft Copilotを用途に応じて使い分けられる体制となっており、両ツールの特性を活かした柔軟なAI活用が可能です(参考:Microsoft Customer Stories)。
AI人財育成プログラム「DXAP」と「Kao AI Academy」
花王のAI戦略において、ツールの導入と並んで重要な柱が「人財育成」です。
2023年11月、グループ全社員のデジタルスキル向上を目指す「DXアドベンチャープログラム(DXAP)」をスタートしました。DXAPは、DXスキルレベルを「ビギナー」「インターミディエイト」「アドバンス」の段階に分け、社員のスキルレベルを可視化したうえで、段階的な向上に取り組む体系的なプログラムです(参考:Microsoft Customer Stories)。
生成AI専門コース「Kao AI Academy」:フレンドとマスターの2本立て
DXAPの中でも特に注目を集めているのが、2024年5月に始まった生成AI専門カリキュラム「Kao AI Academy」です。
「フレンドコース」と「マスターコース」の2本立てで構成されており、フレンドコースは生成AIに関する基本的な知識を学ぶもので、スタートからわずか3週間で3,000名が修了し、現時点では10,000名以上が修了しています。マスターコースは生成AIを実務に活かす発想とMicrosoft Copilotを利用するスキルの習得を目指すもので、約1,500名が受講しています(参考:Microsoft Customer Stories)。
多言語対応・グローバル展開:日本語を母国語としない社員へも
花王のAI人財育成は国内にとどまらず、グローバルに展開されています。
2024年3月には日本語を母国語としない社員を対象にしたビギナー向けコースもスタートしています。「中心的な組織がすべてを担うのではなく、現場に近い社員が課題を解決できるよう、能力開発やルール整備に取り組んでいる」という姿勢が、グローバル全体への浸透を支えています(参考:AI経営総合研究所)。
Microsoft Copilotとの統合活用:1,000名規模のトライアルから全社展開へ

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花王のAI活用はKao AI Chatだけでなく、Microsoft 365 Copilotとの統合活用によってさらなる深化を遂げています。
2023年12月にCopilot for Microsoft 365のトライアルを300名規模でスタートし、2024年4月には1,000名規模へ拡大。全部門での活用が推進されています(参考:Microsoft Customer Stories)。
Teams・Outlook・Word・Excelといった日常的に使うアプリケーションに生成AIが統合されることで、社員が「AIを使う」という意識なく自然にAIのサポートを受けられる環境が整いつつあります。Kao AI ToolsとMicrosoft Copilotという2つの軸を組み合わせた花王のアプローチは、社員のAI活用機会を最大化する戦略として機能しています。
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経費精算AIの自動化:年間約5.5万時間・1.5億円の削減
花王のAI活用の中で、最もわかりやすい業務効率化の成果が経費精算プロセスの自動化です。
花王ビューティブランズカウンセリング株式会社(約6,000名の美容部員が在籍)では、経費領域専門AIプロダクト「SAPPHIRE(サファイア)」を2021年4月より本番運用開始。通勤費・交通費の精算プロセスを自動化することで、1年あたり約5.5万時間の業務時間削減・金額にして約1.5億円の削減を実現しています(参考:Miletos株式会社 プレスリリース)。
「AIが移動経路を予測し、税制ルールに沿って自動仕訳」する仕組み
SAPPHIREの仕組みは、従来「人が手作業で行っていたプロセス」をAIが代替するものです。
従業員の予定情報や入退館情報からAIが移動経路を予測し、出退勤に伴う移動なら「通勤費」、規定距離内での客先や拠点間の移動は「交通費」というように、税制・規定上のルールに沿って自動で勘定科目を仕訳し、基幹システムに連携します。申請者は自動作成されたデータを確認するだけ、上長・経理担当者・人事担当者は申請者が追加・修正したデータのみを確認すればよいため、申請から承認までの負担が大幅に軽減されます(参考:Miletos株式会社 プレスリリース)。
「月1回ボタン1つで精算完了」「精算漏れ防止」と現場から好評
現場の声からも導入効果が明確に示されています。
「月1回申請するだけなので入力の手間が大幅に軽減された」「ペーパーレスになり、ボタン1つで精算ができるので便利」「精算漏れの防止にもつながる」といった声が利用者から届いています。基本的に人手が介在しないプロセスのため、遠回りで申請するなどの不正経費利用や、意図しない二重申請も発生しにくく、内部統制の強化にも寄与しています(参考:Miletos株式会社 プレスリリース)。
製品開発AI①:肌評価AI「Kirei肌AI」の大幅進化

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花王のAI活用は社内業務にとどまらず、製品研究開発の現場においても深く浸透しています。その代表例が、2025年11月に大幅アップデートされた肌評価AI「Kirei肌AI」です。
Kirei肌AIは、花王が独自開発した肌評価用AIで、顔画像を入力するだけで肌の状態を高精度に推定します。2025年11月のバージョンアップでは、複数の独自機械学習モデルが追加され、従来は専用機器でしか取得できなかった肌内部の状態まで推定することが可能になりました(参考:花王 公式サイト)。
従来の約5倍となる77項目の肌評価を実現
今回の大幅アップデートで最も注目されるのが、評価項目数の飛躍的な拡大です。
これまでの約5倍となる計77項目もの肌に関する網羅的な評価が可能になりました。肌状態の確認試験や調査時間の短縮・化粧品の処方設計の精度向上・研究における仮説立案から検証までのサイクルの高速化が実現。さらに、得られたデータを起点に今まで知られていなかった関係性や新たな発想を得るという「データ駆動型」の化粧品開発が本格的に進んでいます(参考:花王 公式サイト)。研究成果の一部は、2025年9月に開催された第35回IFSCC(国際化粧品技術者会連盟)Congressカンヌ大会でも発表されており、国際的な注目を集めています。
「ヒトの感性を学習した」AIがメイクアップ化粧品開発を変える
Kirei肌AIのもう一つの特徴が、人間の「感性」を学習している点です。
花王が独自に収集した幅広い年代の日本人女性の肌画像と、それに対する熟練した専門家の感性評価データを学習させることで、多様で繊細な肌の見た目の印象を、人の目と同じレベルで評価できるAIが実現されています。特殊な測定装置がなくても顔画像から評価できるため、研究の「現場適用性」が大幅に向上しています(参考:花王 公式サイト)。
製品開発AI②:皮脂RNAモニタリング技術とAI融合
花王の研究開発AIにおける最も独創的な取り組みが、「皮脂RNAモニタリング技術」とAI・機械学習の融合です。
花王は2019年に皮脂中に人のRNAが存在することを世界で初めて発見。あぶら取りフィルムで顔の皮脂を採取し、そこからRNAを抽出して網羅的に解析する「皮脂RNAモニタリング」技術を開発しました。RNAは体調や食生活といった環境要因によって日々変化するため、その時点の肌状態を知るのに非常に有用なバイオマーカーです(参考:花王 公式サイト)。
スマートフォン1枚の写真で「肌タイプ」が即時に判定可能に
しかし皮脂RNAの解析には従来1週間程度の時間と高額な費用が必要という課題がありました。
そこで花王は2025年5月、スマートフォンで素顔の写真を撮影するだけで、皮脂RNA発現情報に基づく肌タイプを即時に推定できる独自AIモデルの構築に成功しました。これにより、高度な検査装置なしに誰でも手軽に客観的な肌の指標を利用できるようになります(参考:花王 公式サイト)。
さらに、皮脂RNAに基づく肌タイプをAIで解析することで生活者に最適な化粧品・スキンケアの提案が可能になり、「パーソナライズされた美容体験」の実現に向けた取り組みが進んでいます。この技術は「RNA共創コンソーシアム」を通じてビューティ・ヘルス領域での広範な活用が進められています(参考:花王 公式サイト)。
顧客体験AI:双方向プラットフォーム「My Kao」と肌診断サービス
花王のAI活用は研究開発にとどまらず、生活者との接点となるデジタルプラットフォームにも積極的に展開されています。
スマートフォンを活用したAIベースの肌測定サービスは2023年3月30日より提供を開始しています。「Kirei肌AI技術」と「ハリAI解析技術」を採用し、外部技術(Perfect社ARメイクアプリ「YouCamメイク」)と組み合わせることで独自の測定ロジックを構築。ユーザー一人ひとりにパーソナライズされた美容アドバイスを提供し、2024年12月末現在での累計利用者は約77万5千人に達しています(参考:花王 公式資料)。
双方向プラットフォーム「My Kao」:国内10.7%の顧客がWebサイトを訪問
花王は「My Kao」と呼ばれる生活者との直接対話を可能にする双方向デジタルプラットフォームの構築を進めています。
2024年度において、花王の日本国内顧客のうち10.7%が花王グループのWebサイトを訪問しており、グローバルでのEC売上比率は約10%に達しています。日本の「My Kao」に加え、米国の「My Kao Shop」、中国の「Kao Life+」がそれぞれローンチしており、コミュニティ機能を通じて全社のさまざまな部門が生活者と直接対話しながら、アジャイルなモノづくりやマーケティングが可能になっています(参考:花王 公式資料)。
花王AI活用から学ぶ:消費財・製造業が実践できる3つのヒント

出展:https://unsplash.com/ja
花王のAI活用事例は、消費財メーカー・製造業をはじめ、あらゆる業種の企業がAI導入を推進する際の実践的なヒントを提供しています。
ヒント①:「業務自動化」と「研究開発AI」を並走させる
花王の最大の特徴は、経費精算の自動化(業務効率化)と肌評価AI(製品研究の高度化)という、異なる目的のAI活用を同時並行で推進している点です。
「AIは業務削減のツール」か「AIは新しい価値創造のツール」かというどちらかではなく、両方を同時に追求することで、AIへの組織的な理解と習熟が相乗効果的に高まります。まずコスト削減効果が見えやすい業務自動化でROIを実証しながら、並行して製品・サービスの高度化への応用を探ることが、AI投資を組織に根づかせる戦略として有効です。
ヒント②:育成プログラムは「段階的」かつ「体験型」で設計する
花王の「Kao AI Academy」は、スタートから3週間で3,000名が修了するという驚異的な速さで普及しましたが、それはオンラインの一方向講義だけでなく、実際にプロンプトを書いてAIを体験する「マスターコース」を組み合わせているためです。
「知識を学ぶ→実際に使ってみる→業務に活かす方法を考える」という体験型の学習ステップを設計することが、AIスキルを組織全体に定着させる早道です。規模が小さくても、社内ランチ勉強会・ハンズオンセッション・業務活用事例共有会といった形で同様の体験学習サイクルを作ることは十分可能です。
ヒント③:「データの整備」なくしてAIの効果は出ない
花王が2018年からデータ活用基盤の整備に取り組み、データインテリジェンスセンターを設けて徹底してきたことが、現在のAI活用の土台になっています。
AIに学習させるデータの質・量・整備状況が、AIの性能を決定的に左右します。「AIを導入したいが、うちのデータは散らばっていて整理されていない」という企業が多いですが、それはむしろ「今すぐデータ整備に着手するサイン」です。AIの導入と並行してデータ管理基盤の整備を進めることが、中長期的なAI活用の競争力につながります。
花王AI活用 主要取り組み 比較まとめ表
花王グループが展開しているAI活用の主要な取り組みを、以下の表にまとめます。
| 取り組み・ツール名 | 対象領域 | 主な内容・効果 | 時期 |
|---|---|---|---|
| 社内AI検索「sAI Search」導入 | 社内情報検索 | 研究員の雑務削減を目的に社内向けAI FAQ検索システムを導入。業務効率化の先行事例 | 2019年10月 |
| 経費精算AI「SAPPHIRE」 | 経費・勤怠管理 | 約6,000名の美容部員の通勤費・交通費を自動精算。年間約5.5万時間・約1.5億円の削減を実現 | 2021年4月〜 |
| 社内生成AI「Kao AI Chat」 | 全社員の業務全般 | Azure OpenAI Service活用・自社開発UI。グローバル約16,000人が利用。毎日2,000人以上が活用 | 2023年6月〜 |
| DXアドベンチャープログラム(DXAP) | 全社員のAI・DX育成 | ビギナー〜アドバンスの3段階スキル体系。Kao AI Academyを組み込み、フレンドコース修了者10,000名以上 | 2023年11月〜 |
| Microsoft Copilot for M365 | 全社員の業務全般 | 300名トライアルから2024年4月に1,000名規模へ拡大。全部門での活用を推進 | 2023年12月〜 |
| AIスマートフォン肌診断サービス | 顧客向け体験 | Kirei肌AI技術・ハリAI解析技術とARを活用。2024年12月末時点で累計約77万5千人が利用 | 2023年3月〜 |
| 肌評価AI「Kirei肌AI」大幅進化 | 化粧品研究開発 | 顔画像から77項目の肌状態を推定(従来比約5倍)。データ駆動型の化粧品開発を加速。IFSCC国際学会で発表 | 2025年11月〜 |
| 皮脂RNA×AIによる肌タイプ推定 | 研究開発・顧客体験 | スマートフォン写真1枚でRNA発現情報に基づく肌タイプを即時推定。パーソナライズ提案を実現 | 2025年5月 モデル構築 |
| デジタル戦略部門の新設 | AI・DX推進体制 | 情報システム部門・DX戦略部門などを統合。4センター体制でDXを一気通貫推進 | 2025年1月 |
よくある質問
Q. 花王のAI活用で最も業務効率化に直結している取り組みはどれですか?
A. 数値面では、花王ビューティブランズカウンセリング株式会社での経費精算AI「SAPPHIRE」導入による年間約5.5万時間・約1.5億円の削減効果が最も明確な業務効率化成果です。社内生成AI「Kao AI Chat」のグローバル約16,000人への展開と毎日2,000人以上という高い定着率も、組織全体の生産性向上に大きく寄与しています。
Q. 花王の社内生成AI「Kao AI Chat」はどのようなツールですか?
A. Kao AI Chatは、花王がAzure OpenAI Serviceを活用して自社開発した社内向け生成AIアシスタントです。入力情報が社外に漏洩しないセキュアな環境で、文書作成・情報収集・データ分析・アイデア出しなど幅広い業務に活用できます。グローバルで約16,000名の社員が利用しており、全社員がMicrosoft Copilotにもアクセスできる環境と組み合わせてAI活用が推進されています。
Q. 「Kirei肌AI」はどのような技術ですか?一般消費者は使えますか?
A. Kirei肌AIは、花王が独自開発した肌評価用AIです。顔画像を入力するだけで、肌の色・質感・透明感・ハリなどの特徴を深層学習により高精度に評価します。2025年11月のバージョンアップで77項目の肌状態を推定できるようになりました。一般消費者向けには、スマートフォンの肌診断サービスとして「My Kao」などを通じて活用されており、2024年12月末時点で累計約77万5千人が利用しています。
Q. 花王の「DXという言葉をなくす」というビジョンはどういう意味ですか?
A. これは「2027年までに、AIやデジタルが社内で当たり前の存在になること」を目指す花王独自の表現です。DXが「特別な取り組み」「IT部門の仕事」として語られる状態ではなく、電話やパソコンのように誰もが意識せず日常的にAIを使いこなしている状態——それが花王が目指す究極のゴールです。この「言葉がなくなるほど日常化する」という目標設定が、全社的なAI浸透施策の根幹にあります。
Q. 花王のAI人財育成プログラム「Kao AI Academy」には誰が参加できますか?
A. Kao AI AcademyはDXアドベンチャープログラム(DXAP)のインターミディエイト向けカリキュラムとして設計されており、花王グループの社員が対象です。基礎知識を学ぶ「フレンドコース」は3週間で3,000名が修了し、現時点では10,000名以上が修了しています。実務活用スキルを磨く「マスターコース」も約1,500名が受講しています。国内外の社員を対象に多言語での展開も進められています。
Q. 花王の経費精算AI「SAPPHIRE」は他の企業でも使えますか?
A. はい。SAIPHIREはMiletos株式会社が開発・提供している経費領域専門のAIプロダクトであり、花王以外の企業でも導入できます。従業員の予定情報や入退館情報からAIが移動経路を予測し、通勤費・交通費を自動仕訳して基幹システムに連携する機能が中心で、美容部員のように多拠点を移動する社員が多い企業に特に高い効果が期待できます。詳細はMiletos株式会社の公式サイトでご確認ください。
Q. 花王が「DX銘柄2026」に選定された理由は何ですか?
A. 経済産業省と東京証券取引所が選定する「DX銘柄」は、デジタル技術を活用したビジネスモデルの変革や競争力向上に向けた取り組みが優れた企業に与えられる認定です。花王は、社内生成AIの全社展開・独自肌評価AIによる研究開発のDX・双方向デジタルプラットフォーム「My Kao」の構築・DXAP/Kao AI Academyによる人財育成など、事業・組織・製品すべてにわたる包括的なAI・DX戦略が評価されて「DX銘柄2026」に選定されました。
まとめ:花王 AI活用が示す「消費財メーカーのDX最前線」
この記事では、花王のAI活用について、背景・推進体制・社内生成AI・育成プログラム・製品開発AI・経費自動化・顧客体験AI・成功のヒントまで詳しく解説しました。要点を以下にまとめます。
- 中期経営計画「K27」の「グローバル・シャープトップ」実現に向け、「2027年にDXという言葉をなくす」ビジョンのもと全社AI化を推進。2025年1月には情報システム部門・DX戦略部門を統合した「デジタル戦略部門」を新設し、推進体制を強化しています。
- 社内生成AI「Kao AI Chat」はグローバル約16,000人が利用し、毎日2,000人以上が活用する高い定着率を実現。Azure OpenAI Serviceを活用した自社開発UIでセキュリティも確保しています。
- 経費精算AI「SAPPHIRE」により約6,000名の美容部員の通勤費・交通費精算を自動化し、年間約5.5万時間・約1.5億円の削減を達成。不正経費防止と内部統制強化の効果も得られています。
- Kao AI Academyのフレンドコースは3週間で3,000名・現在10,000名以上が修了。段階的かつ体験型の育成設計が、AIスキルの急速な普及を実現しています。
- 肌評価AI「Kirei肌AI」は77項目評価(従来比約5倍)へ大幅進化し、データ駆動型化粧品開発を加速。皮脂RNA×AIによる肌タイプ推定という世界初の技術も実用化が進んでいます。
花王のAI活用が示すのは、「社内業務の効率化」「製品研究の高度化」「顧客体験のパーソナライズ」という三つの領域すべてにAIを同時展開することで、企業全体の競争力が飛躍的に高まるという可能性です。
最新情報は花王の公式ニュースルーム(kao.com/jp/newsroom/)でご確認いただけます。
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